異常気象下の豪雨、川の氾濫はダムでは防げない
国土交通省が発表した7月の熊本豪雨被害についての試算が物議をかもしている。
建設が中止された川辺川ダムが完成していれば、人吉市などの洪水被害は防げたという。
今回に限ったら、ダムがあれば試算通り被害を防げたかもしれない。
しかし、ダムの建設を推進する省庁の狙いが垣間見える。
想定外の豪雨が多発する異常気象下で、人が自然をコントロールすることは不可能だ。
ダムを造るより「川は氾濫する」前提に立った街づくりをしたほうが現実的だろう。
日本中で甚大な災害が発生するたび、ただ、無力感を覚えるのは私だけだろうか(トホホ)
揺らぐ「ダムによらない治水」の政治判断
国交省九州地方整備局(九地整)が出した川辺川ダムに関する試算。
ダムがあれば下流に位置する熊本県人吉市の水量を4割減らせ、洪水被害を防げた内容。
ダムがある各地で問題になっている緊急放流も必要なかったという。
川辺川ダムは1966年に国が建設を計画したが、完成前に住民の反対運動などが発生。
2008年に蒲谷郁夫県知事が「白紙撤回」を表明、ときの民主党政権が中止を明言した。
日本三大急流とうたわれた球磨川の自然は大きな破壊から逃れた。
「ダムによらない治水」という政治決断は、7月の豪雨により評価を下げた。
蒲谷知事は洪水被害後「ダムは(治水対策の)選択肢の一つ」と発言せざるをえなかった。
自身の信念を捻じ曲げざるをえないほど、今回の洪水被害はすさまじかった。
治水ダムがあっても、今や緊急放流のリスクも
九地整のダム必要論ととれる試算。
ただ、7月の洪水被害は防げたかもしれないが、この異常気象下では先は不透明だ。
近年、日本列島各地で未曾有の被害が連発している。
九地整の試算は、これまでダム建設に反対してきた住民らへの揺さぶりにも思える。
完成まで十年はかかる川辺川ダム。
コストも約1100億円と見積もられている。
そこまで巨費を投じて、果たして将来的に効果があるのか。
全国には治水ダムはいたるところにある。
でも、近年の豪雨被害などによる緊急放流被害も報告されている。
その時は仮に防げても、今や想定外の出来事は日常茶飯事だ。
ダムに頼らず、川の近くに住まない方向で街づくりを
ダム建設で利水、治水の恩恵を受けてきた日本。
しかし、温暖化による異常気象下の今、想定外の被害が出るようになった。
かつての心安らぐ水辺は急変している。
今や日本では川沿いに住むのは危険だ。
洪水が起きれば、家・家財ごと根こそぎ失うことになる。
ダムがあっても、水量が想定を超えれば緊急放流による洪水被害が発生する。
有能な武将同様、むしろ「川は氾濫する」ことを前提に施策を行うべきだ。
費用、安全面を考えれば、川に近い低層住宅の住民に高台への移転を支援していく方向だ。
今後は川辺に住宅地を造成しない施策も必要だ。
巨費を投じてダムを造っても、この時世、洪水被害に大きな効果は期待できない。
自然をコントロールする発想はもはや通じない。
いつ想定外の事態が起きても不思議でなく、抵抗は不可能だ…(トホホ)
まとめ
上流にダムがあれば、熊本豪雨の洪水被害は防げたと国が試算した |
建設に反対してきた熊本県知事も「ダムは選択枝の一つ」と発言せざるをえなかった |
異常気象下、想定外の被害が起きる中、ダムがあっても安全とは言えない |
むしろ、川は氾濫することを前提した街づくりを進めるのが現実的 |
川の近くに人が住まないように街づくりを進め、防災対策を行っていくべきだ |